img_1458948446

0 26/08/15(土)20:47:51 ID:mWe4aW2I
待ち合わせの時間まで、あとたったの2時間しかない。
新品のお洋服は乱れてないだろうか。不慣れなお化粧は落ちてないだろうか。約束した場所を間違えたりしてないだろうか。
何度も何度も確認して、その度に一人高鳴る胸を撫で下ろす。起きてからずっとそんなことばかり繰り返しているのに、手鏡越しに見える頬の朱は未だに収まる気配がない。
「だって、デートなんだから」
デート。その甘酸っぱい単語を頭の中でかき混ぜると、私の中にどんどん都合のいい空想の泡が沸き立ってくる。
練習用具を見に行って、美味しいご飯を一緒に食べて。午後はあちこちで遊びたい。ううん、本当はなんでもいいしどこでもいい。1秒でも長くお兄ちゃんと二人きりの時間が過ごしたい。
それで──月の下で、お兄ちゃんが私の専属になるって約束してくれたあの場所で。今度は、私から好きですって伝えるんだ。
「……伝わる、かな」
少し不安になった私の背中を押すように、ふわりと漂ういい匂い。ダイヤちゃんに貸してもらった、とっておきのフレグランス。
なんだか「大丈夫だよ」って言ってもらえてる気がして、今はそれだけで十分に思えたから。
私は、そっと手鏡を閉じた。
1 26/08/15(土)20:50:49 ID:cij4Bdik
https://tsumanne.net/si/data/2021/05/16/7287119/